好きな漫画は数あれど、何度も読み返したくなる中毒性のある漫画のひとつが『観用少女(プランツ・ドール)』です
初見だとギョッとしてしまいそうなタイトルですが、表紙を見ていただければ分かる通り、とても美しい漫画です
なにがすごいって、人形の美しさもさることながら、ドレスや装飾、家具に至るまで書き込みが繊細で可憐で麗しい……
もちろん、私も目の肥えたオタクですから、絵が美しいだけじゃあこんなに熱くオススメすることはございません
『綺麗な花には棘がある』、そんなことわざをまじまじと感じられる、一筋縄では行かないストーリーが秀逸なんです
女性なら一度は夢見る素敵な世界観の中にある、酷く歪な愛憎にも似た感情の渦
そのギャップが凄まじく、またハッピーエンドだけじゃない考えさせられる考察しがいのあるお話もあって、何度読んでも新鮮な発見があって面白い
今日はそんな『観用少女(プランツ・ドール)』のお話
『観用少女(プランツ・ドール)』とは
簡単に言えば、とんでもなく高価で美しい“観用少女”と、それを買った人間のオムニバス物語です
全3巻、基本1話完結なので気軽に読むことができます(そして全話読んで一晩中物思いに耽る)
どのお話に出てくるプランツも本当に可愛らしく美しい
そして、ミルクと砂糖菓子と愛情を栄養としているという、なんともオタク心をくすぐる設定
登場する人間もアクやクセが強く、どうにも憎めないやつらばっかりです
その中でも特に好きなお話3つをご紹介
天使の役づくり
このお話の主人公は、グラビア雑誌の人気モデルさん
旦那と別れ、同時に仕事仲間の親友まで失った主人公
傷心のまま街をぶらついていた時、ショーウィンドウに飾られたレトロなドレスの美しいプランツ・ドールに目を留めます
そして、そのプランツに、にっこりと微笑まれる主人公
店主が言います
「少女《プランツ》が お客様を気に入っているようでございますが?」
そう、プランツは買い手の人間を自分で選ぶのです
自分のお眼鏡に敵わない人間の前では目すら開けず眠り続け、店主もまたどんなに大金を積まれてもふさわしくない人間にプランツを売ることはしません
プランツに見初められる人間は少数
そして一人の人間を気に入ると、もう他の誰にも目もくれなくなってしまう
だからこそ、プランツは自分の選んだ人間にだけ微笑みかけ、その人から与えられる愛情を糧に美しさを保ちます
その微笑みの美しさと言ったら筆舌に尽くしがたい……
こんな微笑みを向けられたら、どんな極悪人でも愛情を注ぎたくなること請け合いですよ
愛を込めて温められたミルクを飲み、砂糖菓子を食べ、綺麗なドレスを身にまとう
もーホント読んでいるだけで幸せな気分になる!
そりゃこの子を幸せにしたいって仕事にも精が出るでしょう
『天使の役づくり』の主人公も、家で待ってくれているプランツの為に働き、やがて女優さんとして大成します
そしてプライベート面でも幸せを掴み取るのです
なんて素敵なサクセスストーリ!
中にはプランツ・ドールを手に入れた人間が不幸になる話もいくつかあるので、ハッピーエンド至上主義者の私はこのお話は本当に何度も繰り返し読んでしまいます
『観用少女(プランツ・ドール)』全編通して一番好きなお話です
ブルードール
こちらのお話の主人公は、借金取りの下っ端
夜逃げした家に踏み込み、そこでたまたま見つけたのが置き去りにされたプランツでした
上司にプランツの世話を見るよう命じられる主人公
最初はプランツを怖がって近づきもできなかった青年と、愛情不足で冴えなく哀しい表情になるプランツ
店主がミルクを差し出し、言います
「少女《プランツ》に飲ませてやって下さい 人肌に温めて やさしく 寒い夜に泣いている子供に ぬくもりを与えるような気持ちで…」
青年とプランツは、温かい気持ちで淹れたミルクを通して気持ちを通わせていきます
しかし次の買い手が見つかり、お別れを悟ったプランツの寂しそうな顔といったら……!
絶世の美少女にあんな顔をされたら何でもしてあげたくなっちゃいますよ
そして貰われていった後、体調を崩したことがきっかけで、プランツは青年の元へと戻ります
本当にプランツは共にいる人間を選ぶのですね
根の優しい青年が不幸にならず、プランツちゃんとこれから先も幸せになっていくんだろうなと想像できるのが嬉しいハッピーエンドです
メランコリィの花冠
このお話では、姉の始めた便利屋で働く弟が主人公
2人は金持ちからの「青い花冠《ティアラ》」を手に入れたいという依頼を受けます
花冠《ティアラ》とは、プランツ・ドールを宿主として育つ寄生植物
今まで発現した花冠《ティアラ》の色は、全て例外なく鮮やかな珊瑚色だといいます
それは宿主となったプランツが愛情に満たされて育まれてきたから
金持ちは、幻の青い花冠《ティアラ》を咲かせるためには、プランツに与える愛情は哀しみを帯びた甘美な憂鬱である必要があるのだと語ります
この依頼を遂行するために店で出会ったのは、『月華』という名の気難しいことで知られるプランツ
ですが波長の合ってしまった主人公は、月華にぺったりと懐かれます
店主から、花冠《ティアラ》を咲かせるのに月華の素質は申し分ないと聞かされる2人
しかしそこで知ったのは、花冠《ティアラ》が花開く時、花冠《ティアラ》の宿主として栄養源となっていたプランツは枯れるという事実
月華がきらきらの笑顔で懐く主人公に、店主は言います
「観用少女《プランツ・ドール》を“花冠《ティアラ》”のエサとして育てるということに等しいのでございますよ」
心優しい主人公は、自分に笑顔を見せて愛らしく懐くプランツを枯れさせてしまうことに心を痛めます
しかし、花冠《ティアラ》を戴いてより美しく映える月華を見たいという自身の願望にも気づきます
その2つの相反する感情が、月華には憂いを帯びた愛情として、甘い憂鬱になって蓄積していく
そして月華は想いに応えるように、青い花冠《ティアラ》を芽吹かせるのです
このお話、ストーリー運びも秀逸で大好きなのですが、なにより月華ちゃんが可愛くて美しくて堪らないのですよ
美しいサラサラの御髪に、ぱっちりと大きい意志の強そうな瞳
“気むずかし屋”と称されるに値するクールな美人に見えて、その実とっても表情豊かで愛らしいのです
主人公に抱きつく時のニコニコの笑顔、他の人間に捕まった時のしおしおに悲しむ表情、そして憂いを孕んだ大人びた微笑み……
こんな可愛い子を枯らすなんてとんでもない!と終始ハラハラしながら読んでいました
ぜひ月華ちゃんの愛らしさをひと目見ていただきたい!
ドールって美しいよね
ドールを題材とした作品といえば『ローゼンメイデン』が有名ですよね
『ローゼンメイデン』も、ばっちりおめめの美少女や、フリルが贅沢にあしらわれたドレスという女性の心をくすぐる絵で、そりゃあもうオタク女子の憧れが詰まった漫画ですよ
『ローゼンメイデン』が流行った頃、私はオタク全盛期の中学生だったのですが、子供心にこんな美しいドールが欲しいと思ったものです
しかし当時のドールといえば、思い浮かぶのはコテコテの昔ながらのフランス人形
ブロンズの髪もフリフリのドレスも美しいのに、どうにもあの妙にリアルな顔立ちが苦手で……
そう、書いてて思ったんですが、妙にリアルなんですよ
特に口元が苦手で、愛らしく微笑んでくれていればいいのに何故かむっとしているように見えるし、ぽってりとした頬が下ぶくれに見えてしまう
それにあどけなさに感じて可愛いと感じる方も多いのでしょうが、私は苦手
しかし大人になった今、『観用少女《プランツ・ドール》』と出会い、【ドール】と検索をかけてみると想像とは全く違う世界が広がっていました
特に衝撃を受けたのが、ボークス社のスーパードルフィー
Instagramでスーパードルフィーと検索をかけると、そこには私の理想としていたドールたちがいらっしゃいました
大きくて美しい瞳に、つんとした小さなお鼻、薄すぎないぷるつやの唇
あんまりにも美しくて理想的で、取り憑かれたようにスーパードルフィーについて調べていました
1体10万超えにもかかわらず、本気でフルチョイスしようと秋葉原の「天使のすみか」にも足を運んだこともあります
色々と圧倒的すぎて、店員さんに声をかけられずすごすごと帰ってきましたが……
後々冷静になって、私みたいなずぼらにドールは扱いきれないと思い直し購入は断念しました
あの時勢いでフルチョイス申し込まなくて良かった
コミュ障で助かったよねー(棒読み)
幼い頃の想いのまま、ドールは憧れの存在として胸にしまっておくことにします